飾文字

食堂かたつむり

小川 糸
ポプラ社

line

倫子がバイトを終えて帰宅したら、同棲していた彼氏もろとも部屋がからっぽだった。 家財道具も大事に使っていたお鍋やエプロン、箸、今は亡き祖母からゆずり受けた明治時代のすりばちもすっかりと・・・ 唯一、ガスメーターの棚にしまっていた祖母からのぬか床だけ残して・・・。 着のみ着のまま夜行バスに乗り、15才で家を出てから1度も帰っていない実家へと向かうしかなかった。

どうにもこうにもウマの合わないおかんの飼い豚・エルメスの世話をする事で、家の敷地内にずっとずっとやりたかった「食堂」を作る事を許可された。 幼い頃から何かと助けてくれた熊さんに手伝ってもらいボロボロの小屋を少しずつこぎれいに改装し(改装費はおかんが高利貸しも真っ青な金利で貸してくれた)、店へのアプローチにはハーブを植え、 少しずつ確実に理想としてきた「食堂」が出来てきた。
一日一組限定の「食堂かたつむり」が開店した。 しかし問題は、もぬけのからの部屋を見たときからショックでからか失くしてしまった声・・・


食材から作り方、作る手間もおしまずに仕上げる料理の美味しそうな事といったらありません! 化学調味料などいっさい使わずに素材そのものを生かした料理、一日一組限定のその料理は、事前にその人と逢い、好みや家族構成・将来の夢なども聞いて作るのです。 「食」へのこだわり「食」への大切さをしみじみと感じます。 内装から何からこだわって作った食堂かたつむり。 素朴ながらも芯の通ったステキなお店です。こんなお店、誰か作ってくれないかなぁ・・・。


以前この項に映画・CMの原作本と書きましたが、それは「かもめ食堂」の方でした。申し訳ありません。m(_ _)m

- こかげで読書 -
inserted by FC2 system