飾文字

おそろし
三島屋変調百物語事始


宮部 みゆき
角川グループパブリッシング

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ある事件をきっかけに心を閉ざし、人との関わりを恐れた姪のおちかを伊兵衛はあずかる事にした。 伊兵衛は神田三島で袋物屋をやっており、一代で興したにしては立派な構えの店である。 それでもおちかの為にと手伝いの者や店の者の数を減らした。 伊兵衛には碁の趣味があり、屋敷には「黒白の間」と呼ぶ部屋があった。

ある時、碁の約束をしてはいたが、やむを得ない事情で伊兵衛はおかみと二人、家を空ける事に。 「黒白の間」に来た大事な客人に断りの挨拶をするようにと言われたおちかだったが、何せ人とは逢いたくない。 何とかガマンをして逢ったその人は、庭に紅く鮮やかに咲く曼珠沙華を 「怖い怖い・・・」と倒れんばかりに怖がった。 何とか戸を閉めて落ち着いた客人は、何故曼珠沙華が怖いのかをぽつりぽつりと語り出した・・・。


宮部みゆきさんの江戸物ではおなじみのうすら寒い怪談集です。言ってみれば宮部流百物語。
曼珠沙華のお客人から始まった「黒白の間」でおちか相手に語られる百物語。 人ではないものの怖ろしさ、人である事の怖ろしさ・・・「情」というものは何と儚く怖ろしいものなんでしょう・・・。
5編の短編集ではありますが大きな長編小説となっています。 「百物語」なのですから、続編も期待しちゃいますね。

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