飾文字

神様のカルテ

夏川 草介
小学館

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夏目漱石「草枕」を愛してやまない為、古風な語り口調の内科医師・栗原一止は今日も勤め先の病院から帰宅する事が出来ずにいた。
信州長野にある本庄病院は「24時間、365日」の看板を掲げ、一般診療から救急診療まで幅広く地域の人々に愛されてきた。 ・・・医者の都合は考えられては、いない。 ひっきりなしにやって来る救急患者に、本来は内科医であるのに外科処置もする、いや、せざるをえない。他にいるのは研修医、自分がやらねば誰がやるのだ。
潰れそうな(いや、潰れているのか?)幽霊屋敷の様なアパート「御嶽荘」で待っていてくれるのは愛する妻の榛名と、個性が溢れ出る住人達。ここで酌み交わす酒の旨い事旨い事。
徹夜続きの重い頭を抱えながら、今日も病院で患者が待っている。


2010年「本屋大賞」2位の作品です。
バッタバタでごっちゃごちゃの地方医療の大変さ、余命少ない患者との関係。ガン告知の難しさ。最新医療=最善医療なのかの疑問。研修医および医師の長時間労働。本当、いろいろ考えさせられました。
それでもこの本は「重くはない」んです。 問題は山積み状態の日々を送っていて大変そうなんですけど、一止夫婦が住む御嶽荘の面々や、 余命わずかな患者さんの心に、心の底から「ほっ」とさせられるんです。なぜだか「ほんわか」とあったかいんです。そして、静かに涙が流れるんです。

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