八日目の蝉
角田 光代(著)
中央公論新社
ドラマ「八日目の蝉」の原作本です。
野々宮希和子はとんでもない犯罪をしてしまった・・・乳児誘拐。
希和子は世で言う不倫をしていた。そして、その人の子どもをお腹に宿した。
奥さんとは離婚をすると言っていた彼は、今はまだその時ではないと、離婚する際に不利になると子どもをおろさせた。その堕胎手術の為か希和子は子どもの産めない体になった。
そして、希和子が手術をした二ヵ月後、彼の奥さんが妊娠をした・・・。
希和子は気が付くと、彼とその家族が住む街を訪れていた。そして毎日、朝のこの時間に彼は奥さんの運転する車に乗って仕事へと向かう事を知った。その時、何故か赤ちゃんは一人家に置き去りになっている。しかも、家の鍵もかけずに出かけるのだ。
最初はその子を一目見るだけで良かった・・・自分の産むはずだった赤ちゃんとダブる彼の赤ちゃんを一目・・・。
抱き上げ、重みを感じた時、引き返す事の出来ない道を希和子は歩き始めてしまった。
自分の赤ちゃんに名付けるはずだった「薫」という名前をつけて、希和子はその子を育てる事を、その子と二人で生きていく事を選んでしまったのだ・・・。
私はウチの旦那の奥さんです。三人の娘の母親です。
最初、この話のあらすじを知った時、主人公である希和子の気持ちにはなれないと思いました。他人の赤ちゃんを誘拐するなんて!親の身にもなってみろ!と、怒りは起きても同情や気持ちがかぶる事は無いと思っていました。
それが、とんでもなかった。
戸籍もなくて病院にも行けず、学校にも上がる事ができないであろう薫を、人目を避けながら懸命に育てている希和子の姿はまぎれもなく「母」でした。
もちろん、いつ終わるともしれない逃亡の毎日に怯えもしてるし、恐れてもいる。でも、とても幸せな時間を過ごしていたんだと感じました。
1章は希和子の目線、2章は薫の目線で描かれています。
最後はどうしてだかわからないけど、涙があふれていました。